Atco Gasoline(アトコ・ガソリン)のラジオ・コマーシャル

atco gasoline acetate record
Atco Gasoline のコマーシャルが入ったラッカー盤の現物

写真は、アメリカの企業「Atco Gasoline」が作った
2つのコマーシャル・ソングを収めたラッカー盤(レコード)です。

インディーズ・バンドなどの一部を除き、
現存する1960年代以前のラッカー盤(アセテート盤ともいいます)
の殆ど・・・つまり、私達の目にするものの
99.9%は「試聴用」として作られたものです。

その頃は、磁気テープ(リールテープ)が
高価だったことや、装置の関係で
磁気テープよりもレコードの方が気軽に試し聴き出来る
こともあり、ダイレクトに音溝が刻めるラッカー盤を
多く用いていました。

ですから、レコード会社で使った大部分は、
試聴目的のラッカー盤で、
その本当の極一部に「結果的、レコードが未発売になった」
という音源で発見されることもあります・・・けれども、
それは(確率的には)殆どないと私は思っています。

その試聴用として作られたもの以外には、
ダイレクト(直接)に吹き込みが出来る利点を
生かした「マスター音源」として録音された
ラッカー盤があります。
レコード会社で作られたものの中にも
稀にあるようですが、
それは大抵プロデューサーが持っているようなもので・・・
このブログの他の記事で、一部紹介しております。

さて、この写真のラッカー盤は、
上記の「マスター音源」の用途として作られたもので、
ダイレクトに録音された原盤(マスター)です。
1960年代の初頭に作られたものらしく、
アメリカで、このラジオCM(コマーシャル)を作った
当事者が残していたものを
御本人から直接に購入させていただきました。

もう相当に昔のことなので、
細かい日付などは分からないとのことでしたが、
実際のラジオ・コマーシャルの吹き込み(録音)は、
この現物のラッカー盤1枚にされただけ
だったそうです。
そして、当初はこのラッカー盤を
ラジオのキー局に送って、キー局が
レコード・プレイヤーでかけて、他のラジオ局にも
同時に流すという仕組み(生放送)だったらしいです。
ですから、他のコピーを作る必要が無く、
この1枚だけだったと聞きました。

既に、もう何度もかけられていて、
経年劣化とともにボロボロですが、それなりに
歴史のある音盤です。
ミュージックに乗せて語られる2バージョンの
コマーシャルは、面白く感じられる作品です・・・
当時のラジオ放送から録音された方が、
ひょっとしたらアメリカの中にいらっしゃるかも知れませんが、
事実上は、これが最初で最後の音源として
残された現物でした。