単品レコードから探し当てた、モートン・グールド(Morton Gould)の稀少なファースト・アルバム!
モートン・グールドは、ムード・ミュージックだけでなく、
クラシックのレコードも合わせると、
相当な枚数のレコードを作っています。
その、モートン・グールドの “最初のレコード・アルバム” となると、
一体どんなレコードだったのだろうか・・・?
東京都内に輸入盤専門の中古レコード屋さんが沢山あった
1990年代前半、ムード・ミュージックの棚に見る
モートン・グールドのLPレコードを眺めながら、
筆者は思い考えたりしたものでした。当時は、
まだインターネットもありませんでしたから(苦笑)
1990年代も中頃、筆者の記憶が間違っていなければ、
アメリカのニューヨークに、巨大な中古レコード屋があって、
そこからエアメールで取り寄せた在庫カタログ(有料だったかも知れません)
がありました。
この店の名前の記憶が間違っているかも知れないので、
書かないでおきますが、店舗は倉庫も含め巨大で、
日本のテレビ番組でも有名店として、何度か取り上げられていたのを
観たことがあります。確か2000年代に廃業して、
既に業者自体が無いはずです。
そこの在庫カタログは、新聞のようなスタイルで、
日本の新聞紙よりもずっと大きいサイズでした。
年に何回か発行されていたと思います。
そこにはジャンルも何も関係なく、細かい字で、
アーティストと曲名、レコードの種類(LPとかドーナツ盤、
SP盤とか)、そして金額が、
びっしりと掲載されているもので、
レコード番号や写真などは載っていません・・・
そこにお宝があるのかどうか・・・
多分、見る気も無くなるような、もの凄く小さく印字された
文字情報だけが、本当にびっしりと、
膨大に載っているのを端から、目を皿のようにして
見て行くと、モートン・グールドの名と共に、
見慣れない曲名のレコードが2枚続けてありました。
種別が「78’s」とあったので、78回転でかける
蓄音機のSP盤のことです。
それも2枚共にそれぞれが、確か35ドルしてました。
SP盤は重いので、送料も考えると、あまり効率的ではないため、
ドーナツ盤があればと思ったものの、
他で見たこともないので購入してみることにしました。
やがて、航空便で筆者の元にやって来た、その
2枚のSP盤を見ると、SP盤単体のレコード番号ではなく、
アルバムの番号になっていました・・・つまり、
何枚かセットになったSP盤アルバムの「セット崩れ」の
単品だった訳です。
しかも、SP盤時代の針圧は重いため、何度もかけられたのか、
もう音溝が「ツルッツル!」に擦り切れている盤でした(苦笑)
でも、今までモートン・グールドのレコードでは
見たこともない曲だったので、
貴重であったことは確定している訳です・・・
そこから、この2枚のSP盤を手掛かりに、
本来のSP盤アルバムを捜索することになりましたが、
何たって、手掛かりになる情報は何も持っていませんでした・・・
当時、親しいお付き合いのあった、ロサンゼルスの
いくつかの中古レコード屋の店員さんにも尋ねてみましたが、
古過ぎて、誰にも分からなかったのです(苦笑)
何年か経って、ロサンゼルスで女性ひとりが経営している
中古レコード屋の「稀少盤オークション」で、
この2枚のSP盤が含まれた、4枚組の
SP盤アルバムを見つけ、大興奮しました(笑)
やっと見つけた!とは言っても、
その場で申し込みの出来る販売ではなく、
稀少盤のオークション形式(Eメールで申し込むスタイル)
での販売ですから、いくらなら落札できるのかと、
夜も眠れなかった思い出があります(苦笑)
アメリカからの送料も結構かかりそうだし、
どの位なら入手できるのか・・・
申し込んでから何日か経って、女性オーナーから
「あなた(筆者)に譲ります」とメールが来て大感激!
でもね、ここで不安なことを言われたんですよ。
「壊れやすいSP盤を日本に送ったことがないから、
十分な梱包方法がわからない。」と・・・(笑)
この時よりも前から、筆者は海外からSP盤を
購入していましたが、確かに割れて届くことも
多々あるんですね。
現在のような翻訳サイトもなかったと思いますので、
SP盤の梱包方法を中学英語?で何とか
説明したのを覚えています・・・なかなか伝わらなくて、
相手からの「?」が多かったですが(苦笑)
やっと巡り合えた、モートン・グールドの
稀少な「ファースト・アルバム(初アルバム)」ですから、
せっかく届いても割れていたら聴けないので、
これが届くまでは本当にやきもきするような気分でした(笑)
何とか、4枚とも割れずに無事に手元に届き、
この感動的な、モートン・グールド自身による作曲、
そしてピアノの演奏を録音し、何度も鑑賞しました・・・
このSP盤を4枚組にした、モートン・グールドのアルバムは、
全曲がモートン・グールド自身の作曲、そして
モートン・グールド自らがピアノを弾いている作品(自作自演集)なのです。
調べてみると、1941年の初頭にアメリカで発売された
アルバムであることが分かりました。
モートン・グールドは、1913年(大正2年)12月の
生まれですから、彼が27歳位の時のアルバムになりますね。

(Morton Gould Original Piano Compositions)
レコード・ジャケットにあたる「フォルダー」です。
これにSP盤を4枚収納するようになっています。
上記の話で得た現物は「初期のもの」で、写真にあるセカンドのものとは
フォルダーの作りがちょっと違っています。
また、ラベルも初期か、そうでないかでも違いがあり、
セカンド以降は、えび茶色(Maroon)です。
後に10インチのLP盤にて復刻も発売されましたが、それは、このSP盤から収録したものであり、
さらにスクラッチ・ノイズ(シャーシャーという音の針音)の音域を低減しているため、聴きやすくはあるのですが・・・
この時代には、まだ音源のマスターに、
磁気テープを使用していないため、このSP盤そのものが、
マスターの記録原盤と同じになるのです。
筆者は、やっと突き止めて入手できた、このモートン・グールドの
独特なピアノを鑑賞していて、同じ音楽ファンの方にも、
感動のおすそ分けをさせていただきたいと思いました。
むやみやたらに音質を調整し、ノイズを落として
「聴きやすくした録音」ではなく、例えノイズまみれで音質は悪くとも、
その当時の時代の
「そのままの空気も表現されるような、作品としての録音」を
お届けしたいと作らせてもらったのが
録音には、上記の話で最初に入手した「初期盤」を使っています。
ラベルの写真をはじめ、録音日や、彼がピアノを弾いて
録音した順番などは、このライナーに書かせていただきました。
お手元にて、いつでも好きな時に
御鑑賞いただける幸せを感じていただけましたら、嬉しく思います・・・
© 2025 磯崎英隆 (Hidetaka Isozaki)

