レコードが高級品とされていた時代の、歴史的な文化資料(税関でのスタンプ)
中古レコードを入手した時、
何かの記入や、押印などのスタンプを見ることがあります。
今回は、この写真のスタンプについて考察してみました・・・

スタンプが押されているのは、
アメリカで発売された(アメリカ製の)LPレコードなんですけれども、
筆者も知らないマイナー・レーベルのものです。
そのジャケットの裏側に、押されていました。
外周の英語表記は
「MOJI CUSTOMS・EXAMINED PERSONAL EFFECTS」で、
この意味は「門司税関・検査済みの個人持込品」です。
中央の上段は、「門司税関」
中段は、検査日(通関日)に当たる「1964年(昭和39年)5月18日」
下段は、「旅具検査済」「若松」とあります。
税関にて押されたハンコであることは、分かるのですけれども、
何で押されているのか?に疑問を持って調べてみました・・・

1970年頃までの日本では、レコードは一般的に
「贅沢品」とされ、外国の輸入盤は「高価な品」として、
税関では解釈されていたそうです。
それで、
個人が外国から日本に(航空便や船便で)帰国する際には、
持ち物の全てを検査し、
「高額なものや、再販の可能性がある物」については、
「再販目的の品ではない」と明確にするため、
朱印を押すことがあったそうです。
レコードの他には、カメラ、時計、タバコ、香水なども、
税関では同じように扱われていたとのこと。
昔の日本では、新品のレコードに対して、
一律の値段(定価)がつけられていましたが、
アメリカでは、レコード会社によって
値段を決めていたようなので、
いわゆる、「弱小レーベル」ほどに値段が安かった訳です。
写真のLPレコードは、筆者も知らなかったような、
小さな規模の会社(マイナー・レーベル)ゆえに、
レコードの値段は(他の有名レコード会社に比べて)
相当に安価だったのでは?と想像しますが、
日本の税関の解釈では、「レコード」という品目でされるため、
スタンプが押されたという経緯だったそうです。
北九州の門司(現在の福岡県北九州市門司区)にある
「門司税関」は、昭和40年代まで「貿易と通関の要衝」でした。
当時、旅客ターミナルや、港からの個人持込品の検査が
多く行われており、「レコード・カメラ・書籍」などが
チェック対象になっていたとのことで、
写真のLPレコードも、そのひとつだったのでしょう。
ちなみに、一番下の「若松」というのは、
スタンプを押した担当者の名前かと思ったら、
福岡県北九州市の「若松港」に、門司税関の支所または
分室があったらしく、その意味の「若松」らしい・・・
現在は「若松出張所」がありますので、
多分、そこのことだと思いますが、
古い話のため、はっきりとは分かりませんでした。

このLPレコードをアメリカで購入し、
日本へ持ち帰った方が、
家族旅行で行かれたのか、仕事で行かれたのか等、
現在となっては、もう分かりませんけれども、
上記のような経緯で、
昭和39年5月18日に、門司税関でスタンプが押されたという、
歴史的な文化資料として、
当時を思い描いてみるのも、面白く思いました(笑)
© 2025 磯崎英隆 (Hidetaka Isozaki)