ラジオで聴いた『ブルー・ムーン』を追いかけて〜忘れられなかった、マーセルズのレコードを探した日々

ある日、ラジオのオールディーズ番組から
流れて来た『ブルー・ムーン (Blue Moon)』という曲が、
衝撃的で忘れられませんでした。

この曲は、リチャード・ロジャース(Richard Rodgers) 作曲、
ロレンツ・ハート(Lorenz Hart) 作詞で
1934年に出版されていて、
ムード・ミュージックでは、スタンダード・ナンバーとして
取り上げられることが多く、
聴きなじんではおりました・・・が、
この時、私が聴いたのは、ドゥワップというスタイルの
グループ・コーラスで、とてもテンポの速い、軽快なものでした。

1986年のことで、高校生だった私は、
当時のエフエム東京か、エフエム横浜で流れていた
オールディーズ番組を(高校の入学祝いで)
買ってもらったミニコンポで録音していました・・・
カセットテープに。

聴いていたオールディーズのラジオ番組は、
何曲かをいっぺんに流し、後から曲名とアーティスト名を
アナウンスするだけ、のスタイルでしたから、
一応、ブルー・ムーン、マーセルズ・・・というのは
聞き取って、メモするのです。

しかし、アーティストに関する情報などは
何も得られないのです。
まだインターネットもありませんでしたし・・・

それで、横浜は関内にあった「ディスク・プラザ」という
中古レコード屋に行って、“オールディーズ”と書かれた
インデックスのコーナーを見るのです(笑)
まぁ・・・見つからない、です。
その時、レジにいた店員さんにもよりますが、
尋ねてみても大抵「?」ですね(苦笑)

ラジオ放送からカセットテープに録音した
『ブルー・ムーン』でなく、
ちゃんとレコードで聴いてみたいなぁ・・・と願う、
当時の私がいました。

時はそれから数年経ち、オールディーズ系の書物などで、
ただカタカナでしか知らなかった
「マーセルズ」というアーティストが
「The Marcels」という5人組のグループだと
いうことを知りました。1959年にペンシルベニア州ピ
ッツバーグで結成されたそうです。

復刻CDは持っていなかったので、
出ていないか、見つけていなかったんでしょうね。


記憶が間違っていなければ、さらに数年後の
1995年頃に、東京は新宿にあった輸入中古レコード屋の
「アーバン・レコーズ」で、上の写真のものと同じ
LPレコード(ラベルは確認していない)を
発見しているんです・・・
値段は6万9千円(記憶違いでなければ)。

この時は既に社会人にはなっておりましたが、
LPレコード1枚にそれだけ出せるか?というとね・・・
毎回、店に行っては、壁に飾ってある、
その『ブルー・ムーン』を眺めては、欲しそうな顔を
していたので、店のオーナー(名前を失念)から
「買わないの?売れちゃうよ?」なんて、
けしかけられて、お互いに笑ってました。

そのレコードは、なかなか売れず、
値札が差し替えられては、売値の数字が
少しずつ下がっていきました。

4万6千円まで下がったのを見た時、
やっぱり “買おう!” と、思ったのですが・・・
やめました(苦笑)

理由は想像つきますか?





「・・・。」





この店では、アルバムタイトルなどを書いた、
小さな紙片に、赤いインクで値段のスタンプを
押していて、レコードを入れているビニール袋の
内側に貼り付けていました。

その値段の紙(プライスカード)を
何度も入れ直しているため、LPレコードジャケットの
その部分周辺が、既にインクで赤く汚れていたんです・・・ 

これではねぇ・・・
なんか血が付いてるみたい(苦笑)


この頃、既に海外から通信販売で
中古レコードを取り寄せることもしていて、
他の記事でも書いていますが、私が欲しがる中古レコードを
積極的に探してくれた人物(アメリカの中古レコード屋の店員)、
イニシャルで「T」さんがいたんです。

日本を含む、大抵の中古レコード屋は
“このレコードを探しています” なんて言うと、
びっくりするような値段でふっかけてくるのも
日常茶飯事でしたが、
彼は逆に、びっくりするような安価な値段で、
探し出してきては、提供してくれていました。

彼は「どうしても状態の良いのが見つけられない」と
言っていましたが、「それでも欲しい?」と聞かれて、
欲しいと返していたら、提供してくれたのが
写真のLPレコードの『ブルー・ムーン』
(ゴールドラベルのオリジナル盤)だったのです。
しかも、手書きのマトリックス(初期盤)!

レコード盤の内側の溝がない部分、赤い矢印のところにある刻印をマトリックスと言っています。

彼はマトリックス(刻印)のことは言ってなかったけど、
稀少盤は値段が違うこともあるんですね。

この頃の私が、中古レコードの値段が
高いか安いかを参考にしていたのは、もちろん、
他の中古レコード屋の値段もありましたけれど、
横浜にあった輸入中古レコード屋の
「バック・トゥ・ザ・ロック」の神谷さんに
教えてもらって購入した、ゴールドマインの
プライスガイド(goldmine’s Price Guide)
という本でした。

日本では、切手の価値(取引価格)が表記された
カタログ本が昔からありますけど、それのレコード版です。

当時のプライスガイド・・・1994年出版の
ものを見れば、150ドルから400ドル
(後発のブルー・ラベルでも60ドルから150ドル)
と書かれています。それでも、実際にアメリカで
売られている値段はもっと高額でした。

表記される価格は、出版社によっても違っていて、
例えば、ジェリー・オズボーン(Jerry Osborne)の
プライスガイド1997年出版のでは、
75ドルから125ドル
(ブルーラベルは30ドルから50ドル)に
なっていますが、これは多分、安過ぎです。

「T」さんが言って来た値段は、70ドルでした。
他のレコードも合わせて買っているのと、当時の
1ドルの日本円がはっきりしませんけれど、
1万円くらいだったと思います。

そうして、やっとレコードで聴けるようになった
『ブルー・ムーン』は、
アメリカで1961年7月に発売された
オリジナルのLPレコードとして入手できたのでした(笑)


このLPレコードを手にとって、またびっくり!
後のホリーリッジ・ストリングスのアレンジャー、
ステュー・フィリップス(Stu Phillips)が
手掛けたアルバムだったのを知りました。

LPレコード・ジャケットの裏側です。解説部分にはモザイクを入れています。
左下に、このアルバムのディレクターが、ステュー・フィリップスであるとのクレジットが出ています。

でも、マーセルズがアメリカで1961年に
ヒットさせた「ブルー・ムーン」は、
当時の日本でヒットしていないんですね。
私は「いいなぁ!」と、ラジオから流れて来たのを
初めて聴いて、感動しましたが・・・

「ブルー・ムーン」という曲そのものは、
ムード・ミュージックの演奏でも度々出てきますので、
珍しくありませんし、ポール・ウエストン楽団の
演奏はお気に入りです。

しかし、マーセルズによる「ブルー・ムーン」の表現は、
当時の私に衝撃をもたらし、とても新鮮だったのです!
 

English Summary

In 1986, when I was a high school student in Japan, I heard “Blue Moon” by The Marcels on an oldies radio program. I was already familiar with the song itself as a popular standard, but The Marcels’ energetic doo-wop version was completely different from anything I had heard before. It made a lasting impression on me.

At that time, there was no Internet, and information about old records was often difficult to find. I recorded the song onto a cassette tape from the radio and spent years trying to learn more about the group and find a copy of the original record.

As I continued collecting records, I eventually discovered that The Marcels were a vocal group formed in Pittsburgh, Pennsylvania, in 1959. Years later, I even encountered an original LP copy of their album Blue Moon in a record shop in Tokyo, but I decided not to buy it because of its condition.

Fortunately, an American record dealer who often helped me locate rare records eventually found a copy for me. It was an original gold-label pressing of Blue Moon (Colpix CP-416), released in July 1961.

Holding the record in my hands, I discovered another surprise: the album had been arranged by Stu Phillips, who later became well known for his work with The Hollyridge Strings.

Although The Marcels’ “Blue Moon” was not a major hit in Japan at the time of its original release, it remains one of the most memorable recordings I have ever heard. What began as a song recorded from a radio broadcast eventually became one of the most meaningful records in my collection.