レコードは買わずに、借りてダビング(複製)していた方が増えた時代を考える・・・後編


前回の中編では、
「黎紅堂(れいこうどう)」代表取締役社長 大浦清一 氏の話を
取り上げさせていただきました。
そして、今回は貸レコード屋の二番手「友&愛」のインタビューをみてみます。

レコード・レンタル「友&愛」
代表取締役 牛久保洋次 氏の話


「貸しレコード業の設立動機」

牛久保氏の奥様も音楽ファンとのことで、
大きなステレオセットを購入した後、奥様は面白そうなレコードを
次々に買って来るようになったそうです。
それで氏も、奥様の買ってくるLPを聴いてみると、
良いと思える曲は1、2曲しか入っていないので、
これでは高く付くと思ったのが動機だったとのこと。
もっと安価にレコードを聴くことが出来れば良いのにという
不満があり、既にレコードレンタル自体が他にも
出来ていることを知って、
御自身でも始めようと思われたそうです。

「設立後のユーザーの反応」

最初は、お客さんが来るかどうか分からず、
不安だったものの、大学生を中心に、あまりに沢山の
お客が来るようになって驚かれたとのこと。
お客が、借りたレコードをカセットテープに
録音(コピー)することは、考えていなかったそうです。
ラジカセ全盛時ですから、
ミュージック・テープ(LPレコード・アルバム同様に収録のカセット)
も売っていたら、この売り上げも伸びたそうです。
ついでにレコード針も親切に説明しながら売っていたら、
レコード小売店よりも多く売れていると(卸業者から?)
言われていたそうです。
これは当時子供だった私にも実感がありますけれど、
「レコード針」に関しては複数の、
どのレコード屋に行っても不親切な対応でしたね(笑)
当時にレコード屋でレコード針を買っていた方なら
分かると思いますが、数百?ものレコード針が
細かく区分けされた、大きなディスプレイ・ケース(というのかな?)
がカウンターの裏とか横に置いてあって、
そこで自分で適合した針を見つけなければなりませんでした。

今まで使っていたレコード針を
パッケージごと持って行って「これと同じレコード針が欲しい」
と店員に言った時の対応は、どのレコード屋さんでも
本当に酷い対応でした。子供なので、酷い対応をされると、
他の遠くのレコード屋さんへ行ったり、
祖母や親戚の家に行った先のレコード屋で買おうとしても、
どこも不親切だったのをよく覚えています(苦笑)
同じスタイル(型番)でも、ダイヤ針、サファイア針、
丸や楕円形など種類もありました。
でも、そんなに特殊なレコード針ではなく、
出回っているスタイルのものなのですが・・・ 
例えば、以下の写真のような。
 

新品のレコード針が入ったパッケージです。
父親が若い頃に買ったセパレート・ステレオや、昭和50年代の卓上プレーヤーを
小学生の低学年の時に使っていて、それがこのスタイルのレコード針でした。
パッケージの裏側です。
レコード針といえば「日本蓄針」製品が、ほとんどでしたね。
使いかけの古いレコード針です。
私には音の違いが分かりませんでしたが、
ゴム(写真では水色の四角い部分)が付いているのと、付いていない針がありました。


「売り上げ増に見る、ユーザーの動向」

物質的に豊かになり、日本人の物質欲は飽和状態に
なっているのではないかということで、
時間を豊かに過ごすためのもの・・・つまり貸しレコード、
レンタル・リースなどに今後も需要があると見ているそうです。
また、レコード小売店が無いような、
人口の少ない地域にも出店しており、音楽文化のサービスを
今後さらに拡充して行きたい旨が語られています。


「他の貸しレコード3社と共に、日本レコード協会加盟の
レコード会社13社から提訴されたことをどのように思うか」

ユーザーの声や、社会的な面から見ても、
レコード会社の訴えには無理があると考えているそうです。
仕入ルートからの圧力など、子供の喧嘩のような、
感情論争のような気がして、腹も立たない旨が語られています。
レコード小売業に影響が出ているのは、
貸しレコード業が原因というよりも、他に原因があるからだと言います。
例えば、小売店のサービスは悪く、視聴もさせてくれない、
レコードは高くて、つまらない曲も入っていて、
商売の工夫と努力もなく、業界そのものが殿様商売である・・・
提訴している側は、ユーザーの需要や変化をつかむことが
出来ないのでは無いかと思うそうです。
この辺は、私も色々思うところがありますけれど、
レコード屋さんにしても、貸しレコード屋にしても、
結局、店にあるレコードは流行り物ばかりで、私には
品揃えに魅力がなかったですね(笑)


「提訴された後のユーザーの反応」

多くのお客から支えられていることが力になって
いるとのこと。経済的な壁を飛び越えさせて、
より多くの音楽との出会いをさせてあげたい・・・
ということだそうです。


「今後のビジョンについて」

音楽ファンとして、同じ音楽ファンのユーザーに、
一人でも多く音楽を届けるサービスをしたいということで、
お金の結論から出発するものでは無い旨が語られています。
良いLPレコードは結果的に売れているので、
そのような良い音楽を発見してもらうための手段を
提供したいそうで、今後はレコード制作も
やって行きたいと語られていました。
この部分は「黎紅堂」と同じですね。
他にも、レコード会社や業界についても色々
語られておりますが、その部分は割愛します。

貸レコード屋「黎紅堂」「友&愛」共に、
それぞれ主張はあるものの、立場の違いによって
見方は変わるものです。
この後、著作権法も変わり、
レコードもCDや配信に変わったことで
「商売」としては成り立たなくなり、
結果として貸しレコード屋は無くなってしまいました。

最新のレコードを安く借りられるのは、利用者からすれば
良かったものの、利益の分配に問題があったかも知れません。
私は過去に一度も、貸しレコード屋を利用したことが
ありませんでしたが、このような業種もあったことを
思い出して、資料からピックアップしてみました。

あなた様は、「貸しレコード屋」について、どう思われたでしょうか?(笑)
 

1981年頃には、雑誌などにも
レコードに限らず、レンタルの記事や広告もありました。
今回は取り上げませんでしたが、この頃は業界で色々と騒ぎになっていたようです。
貸しレコード屋の出現が「レコード文化の危機」だったそうですが、
本当でしょうか???
私は近所のレコード屋さんで新品のレコードを買ってましたが・・・?


何と!こんな著書が!!
 
代表取締役 牛久保洋次 氏が著者の御本!

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