ワーナーブラザーズ・レコードの「最初に作った自社アーティスト」&「設立初の新譜紹介アルバム」~サンプラーという呼び名の宝石箱
サンプラーと言うと、「音声をサンプリング」した音源を
使用するような電子楽器のことと思われてしまうかも
知れませんが、それではなく、私がここに書くのは
レコードのカテゴリーです。
LPレコードが誕生してからと思われますけれども、
アメリカでは、少なくとも1950年代前半までに
レコードのカテゴリーとして確立されていた呼び名なのです。
手持ちの英和辞書(研究社)で「Sampler」を引いてみると
“見本検査人、試食者” などという言葉が載っています。
サンプラーとして、実際にカテゴリーされていたレコードには、
さまざまなタイプのものがありますけれども、
一般的なタイプとしては、
複数のLPアルバムから部分的にピックアップして、1枚に収録したものです。
例えば、そのレコード会社から発売された
“特定の楽器”の演奏を集めたものや、
推薦曲を集めたコンピレーションなどがありますが、
1950年代のものには、高音質録音または、ステレオ録音を
集めて企画されたものが目立ちます。
サンプラーという呼び名でも、普通のレコードと同じように
値段が付けられていて、特殊な企画のものには
普通のレコードよりも高い定価が付けられているのも珍しくありません。
サンプラーという名前から、無料か格安で配られるサンプル盤
のようなイメージがありますけれど、そうではないんですね(笑)
写真のものは、
1959年にアメリカのワーナーブラザーズ・レコードが
最初に発売したサンプラーです。
同社がステレオで発売した12タイトルのLPレコードから
1曲ずつをピックアップして、
1枚のステレオ・レコードのサンプラーとしています。
これは箱型のジャケットになっていて、
ステレオ再生のための資料などが同封されています。
これらサンプラーとしての内容には、
コンピレーションのスタイルが多いため、
レコード会社が定期的に作っていた“新譜紹介”と
混同されることがあります。
この決定的な違いは、「定価の付いた売り物のレコード」か、
それとも「非売品または無料配布の類」であるかです。
サンプラーは、「定価の付いた売り物のレコード」です。
これ自体が企画を持っており、
単なる宣伝ではないという考え方です。
一方、レコード会社による新譜紹介のレコードは、
宣伝が目的のため、売るのではなくて配るという考え方
なのを御理解いただけるでしょうか。
以下の写真は、同じワーナーブラザーズ・レコードが作った
「新譜紹介のレコード」です。
それも設立して、第一回 新譜発売のもの。
つまり、ワーナーブラザーズ・レコード設立最初の
新譜紹介のLPレコードです。
こちらは見開きのジャケットになっていて、
同社のレコーディング・スタジオの写真や、挨拶文などが載っています。
ちなみに、ワーナーブラザーズ・レコードが設立したのは1958年でした。
この1950年代というのは、レコード産業が発達してきた頃で、
同じ映画会社のMGMが随分前にレコード部門を作り、
それが成功していることから、各映画会社も
自社でレコード会社を作り始めたのです。
ワーナー・ブラザーズは、キャピトル・レコードの副社長を
ヘッドハンティングして社長に置き、レコード部門を設立させました。
まだスタートしたばかりですから、これから自社のアーティストを
育てて行こうということで、既存のアーティストではなく、
ハリウッドで「ヴォイス・オーディション」をして、
選抜した人達を集めて結成されたのが、
ワーナー・ブラザーズ・レコードで最初のアーティストだった訳です!
もちろん上記、ワーナーブラザーズ・レコードが最初に出した
新譜紹介に載っておりますが、このデビュー盤(デビュー・アルバム)は、
『バイ・バイ・ブルース』(EH-428)にて復刻させていただきました。
彼らの活動は、そんなに長く続いたように思えませんけれども、
ワーナーブラザーズ・レコードの「はじめて」の一部を
御紹介させていただきました。
これは2018年6月に、以前のブログに記載していた記事を修正加筆したものです。