ナット・キング・コールの未発表バージョン収録のラッカー盤が作られた経緯が判明しました・・・アンリリース作品の行方???

既に他の記事でも触れておりますが、随分前から
筆者の手元にあったナット・キング・コール(Nat King Cole)の
ラッカー盤についての経緯が分かりました。
まずは、以下の記事を御覧いただいてから、
お読みいただきたく思います。


このラッカー盤に収められた録音の全部が、
実際の製品にはなっていないので、
アンリリース(未発売、未発表)音源であることが分かっています。
でも、この音源の正体は、一体何だったのかは不明のままでした。

最初と終わりに、聴いたこともないテーマ曲らしい演奏があり、
その間に6曲があります。
そして各楽曲の前に、ナット・キング・コール御自身が
曲の説明などを語っています。

これらを聴いていて、最初にラジオ用の音源かと思いましたけれど、
しゃべっている言葉からは、違うように思い、
では、どこかのライブ収録かもと連想しましたが、
司会者の声や、観客の拍手なども入っていません。

しかしながら、筆者としては、
ここに収められた、ナット・キング・コールの素晴らしいヴォーカル、
そしてバックの演奏共に絶品の録音であるために、
世界中にいらっしゃる、ナット・キング・コールのファンの皆さまへ、
これを資料情報と共に楽しんでいただけるよう、
パッケージとしてお届けしたいと考えていました。


ネット上にいる大多数のテイカー(相手の利益など考えず、
自分が受け取ることだけ考えているような人格の人物)は、
違法だろうが何だろうが、
「動画サイトのユーチューブ(YouTube)にでもアップすれば、
タダ(無料)で楽しめるのに!」と思うでしょう。

でもそれでは、皆んながハッピーにならないんです。
パッケージ資料として残したい希望もありましたが、
ちゃんと、かかわった人達で経済が回るようにするべきなんです。
権利者への支払い、製作費や管理費、このラッカー盤を入手して
長年持っていた筆者だって、それなりに手間暇かけることに
なるのですから、このサイトの維持費も含めて収入を得たかった訳です。
つまり、なるべく多くの人達が、きちんと対価を得て、
経済がまわり、商品の購入者にとっても良き品、
入手経緯の物事としてもハッピーになる・・・それが筆者の理想です。

どのようにするのが最善なのか、随分長いこと色々と思案しました。
結局、このラッカー盤には、キャピトル・レコードのラベルが
貼られているので、理想としては、
筆者も大好きなキャピトル・レーベルにてパッケージを出したいと思い、
ユニバーサル・ミュージックでお願いできればと結論付けました。

昨年、事情を詳しく書いて、ユニバーサル・ミュージックの
日本法人へ問い合わせたところ、2週間近く後の返答は
「USキャピトルに通知します」だけでした。
筆者としては、CDを出すか出さないかに関わらず、
結果報告をいただきたい旨、当日に返信しましたが、
結局、ユニバーサル・ミュージック日本法人からは、
最初の一度だけで、後に何も返信いただけませんでした。

では、直接にアメリカのキャピトル・レコードに尋ねてみたいと、
数年前のビートルズの記録映画に出演の つて で、
監督の東 氏を通して、3名のメールアドレスを教えていただきました。
うち2人は肩書きが分からないので、
アメリカのユニバーサル・ミュージックの副社長であることが分かった
人物の1人へ、詳しく説明を書いて送ってみましたが、
既に2週間以上経つものの、何の返信すら、いただけませんでした。

筆者としては、そのような対応をする企業、
そして人物であったことが分かったので、それはそれで
良かったのかも知れません。
ただ、最初に思い描いた形で、
世界中のナット・キング・コールのファンの皆さまへ、
お届けすることが出来ず、残念な結果になってしまいましたが・・・ 

そのような事情で、ユニバーサル・ミュージックでの
パッケージを作らせていただくことは無くなりました。
実際にパッケージとして流通させるには、
結構な費用もかかる上に、それだけ沢山売ることにも、
個人では大変ですから、もう棚上げです(苦笑)


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このラッカー盤自体、もう既に70年以上経っていますし、
劣化もあるでしょうから、保管の問題と、
現時点では諸事情で流通出来るようなパッケージとして
制作できないため、ある方へお渡ししてしまいました・・・

そうしたら、ちょうど、そのタイミングで、
このラッカー盤の面白い情報(経緯)が判明しました(笑)
筆者がずっと手がかりを探していたので、
今頃?という感じですけれど、そのようなこともあるのですね。


このラッカー盤に書かれた「SISTER」という単語を
キーワードに、当時のアメリカの背景を調べ、
そこから事情にたどり着きました。

アメリカで「慈善事業」が社会的に非常に活発な時期だった1950年代、
戦後復興や冷戦の影響もあり、地域社会や
世界への貢献が強調されていたそうです。
中でも、地域社会の中心的な役割を果たしていた教会で行われる、
チャリティー・イベントが活発で、
教会が主催する慈善活動は、信仰を実践する一環として行われ、
多くの人々が積極的に参加していたそうです。


その「チャリティー」という言葉自体が、
キリスト教の教えに深く根ざしているとされ、
「Faith, Hope, and Charity(信仰、希望、慈善)」が
重要な美徳として挙げられています。
そのため、教会での慈善活動は、宗教的な意味合いと結びつき、
広く受け入れられていました。
それで、チャリティーと教会には、深いつながりがあります。

教会が行うチャリティー・イベントの目的は、
貧困家庭の支援、地域社会の発展、海外宣教活動、
孤児院や病院の運営支援など、具体的で身近なもので、
こうした活動は、信者同士の絆を深めるだけでなく、
地域社会全体の結束力を高める役割も果たしていたそうです。

ナット・キング・コールは、
父親が教会の牧師さんだったこともあって、一般の人達よりも
多くの教会の人物と、お付き合いがあったそうです。
教会でのチャリティーは、上記のような
社会的背景があったこともあり、1952年3月頃、
レニーという女性の修道者が、
教会でのチャリティー・イベントのために、ナット・キング・コールへ
出演を依頼したそうなんです。

でも、単にスケジュール的なことだったのか、あるいは
出演料のことか、キャピトル・レコードとの契約上のことか等の
詳しい理由は、はっきりしないのですが、
ナット・キング・コールは、レニーさんのいる教会の、
そのチャリティー・イベントには、
出演・演奏することが出来なかったそうなんです。

それでナット・キング・コールは、親愛なる
シスター・レニーのためにスタジオで録音し、
彼女の教会でレコードとして再生出来るよう、
ラッカー盤(吹き込みながら、直接に音溝を刻むことの出来る盤)にして、
彼女にプレゼントしたものが、この現物だったとのこと。

でもレニーさんは、このラッカー盤を
再生することが無かったとされ・・・?
教会にレコード・プレーヤーが無かったのかも知れませんね。


この録音の吹き込んだ先が、
磁気テープで、ラッカー盤にコピーしたもののような感じですが、
ラッカー盤は直接に吹き込みながら
音溝を刻んで行くことも出来るので、
音質がとても綺麗なことを考えると、ひょっとしたら、
はじめからラッカー盤に吹き込んだものの可能性もあります・・・

とにかく、
この録音のラッカー盤は、ナット・キング・コールから
レニーさんへプレゼントされたもののため、
結局、この現物1枚しかなかった・・・ということらしいのです。

そのような事情、経緯だったならば、
ナット・キング・コールが、それぞれの演奏の前に、
曲の解説を吹き込んでいる理由にも納得が行き、
ラジオ用でもなく、ライブ録音でも無かった
ということでも理屈が合いますよね。

そして、キャピトル・レコードから発売したレコードと
同じではないバージョン」であったことも、
理にかなっていると思えます。

もうこのラッカー盤は、既にある人へ預けてしまい、
世界流通できるパッケージとしても作ることが出来ず、
天国のナット・キング・コールさんに、思いが至らず、
申し訳なかった気持ちがあるものの、
1曲分だけ、筆者がプライヴェート復刻させていただきました・・・ 

それも『アンフォゲッタブル』!!!(笑)

このCDでしか聴けない、幻の音源です・・・ 

(再生ボタンを押すと音声ファイルを読み込みます。音質は製品と同じではありません。)


© 2025 磯崎英隆 (Hidetaka Isozaki)


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